改正省エネ法施行で企業が直面する「電力削減と生産性向上」の矛盾

エネルギー

「電気の需要の平準化の推進に関する措置」を追加した「改正省エネ法」(正式名称「エネルギー使用の合理化等に関する法律の一部を改正する等の法律」)が2014年4月1日から施行されました。これにより、省エネ法に基づき指定された特定事業者や特定連鎖化事業者は、従来の省エネ対策に加え電力消費の計測管理徹底と電力消費量削減が求められています。つまり、企業は生産性を向上しつつ電力消費量を削減しなければならない矛盾に陥っています。この相反する経営課題をクリアする抜本的対策は何でしょうか。

改正省エネ法のポイント

2014年4月から施行されている改正省エネ法の最重要ポイントは「電気の需要の平準化の推進」。「電気の需要の平準化」とは「電気の需要量の季節又は時間帯による変動を縮小させること」と定義されています。

そこで、同法は電気需要平準化を推進するため、次の4つの措置を新たに盛り込んでいます。

  • 電気需要平準化時間帯の設定
    同法は「『電気需要平準化時間帯』とは『電気の需給の状況に照らし、電気の需要の平準化を推進する必要があると認められる時間帯』をいう」として、具体的な時間帯を「全国一律で夏期(7―9月)と冬期(12―3月)の8―22時」と設定。この時間帯は夏期・冬期とも電力消費率が1日の平均を上回る時間帯であり、この時間帯の電力消費抑制が改正法の目的と見られています。
  • 工場等における電気の需要の平準化に資する措置に関する事業者の指針の策定
    同法は「工場等における電気の需要の平準化に資する事業者の指針」として「特に重要かつ共通的な事項」と「具体的な電気需要平準化に資する措置」を定めています。

    後者の措置では、

    1)チェンジ……事業所のエネルギーを電力から燃料または熱に転換する。具体的には自家発電設備の導入、空調設備の熱源変更など

    2)シフト……電力を消費する機械器具の稼働時間変更や蓄電池・蓄熱システムの導入

    3)カット……エネルギー消費の合理化徹底、電力消費量の計測管理徹底、電気需要平準化に有効なBEMS(建物のエネルギー管理システム)等総合的エネルギー管理サービスの利活用促進

    などの対策実施を企業に求めています。

  • 電気需要平準化評価原単位を策定
    「電気の需要の平準化に資する措置を実施した事業者が、省エネ法上不利な評価を受けないよう、新たな原単位として、電気需要平準化評価原単位を策定」(資源エネルギー庁「省エネ法の改正について」)しています。

    従来の省エネ法では、事業者が実施した平準化対策を適切に評価できる指標がなく、事業者が自家発電設備等を導入した場合は、その発電効率の優劣によりエネルギー使用量が増減する事態が生じていました。このような不公平を解消し、事業者の平準化対策を適正に評価する指標として、新たに電気需要平準化評価原単位が策定されたものです。

    そこで改正省エネ法では、電気需要平準化時間帯内に電気使用量を削減した場合、同時間帯外における削減よりも原単位の改善率寄与が大きくなるよう、同時間帯内の電気使用量を1.3倍して算出されます。

  • 定期報告書様式の変更
    同法は、新措置の円滑な運用を図るため、電気需要平準化時間帯の電気使用量、電気需要平準化評価原単位とその悪化理由、電気需要の平準化対策実施状況などを報告するための記載欄を「省エネ法に基づく定期報告書」に追加しました。

改正省エネ法の適用対象となる事業者

改正省エネ法の適用対象は「特定事業者」と「特定連鎖化事業者」に大別されます。前者は「法人格」すなわち企業を単位とした特定の事業者を指します。

具体的には企業全体(本社、工場、支社、営業所、店舗など)の年間エネルギー消費量が1500キロリットル以上(原油換算)の事業者となります。したがって、子会社、関連会社などは別事業者として扱われます。後者は特定のフランチャイズチェーン事業者を指します。すなわち、フランチャイズチェーン本部と加盟店を合わせたチェーン全体の年間エネルギー消費量が1500キロリットル以上(同前)の場合、本部が法適用対象になります。

そして、法適用対象事業者は「エネルギー管理統括者・エネルギー管理企画推進者・エネルギー管理者・エネルギー管理員」の選任、エネルギー削減(CO2排出量削減)の中長期計画書と定期報告書の提出などが義務付けられています。

次の改正省エネ法の目玉は「ベンチマーク制度」?

省エネ法は過去6回改正されました。それでも現行改正省エネ法では、

  1. エネルギー消費原単位を年平均1%以上低減するのが困難
  2. 省エネ対策を既に相当程度進めてきた優良事業者が、エネルギー消費原単位1%以上低減未達により適正評価されていない

などの課題が残されています。この解決策として次の改正省エネ法に盛り込まれると予想されているのが「ベンチマーク制度の創設」です。ベンチマーク制度とは、事業者の省エネ対策を業種共通の指標により評価する制度です。

資源エネルギー庁において、2008年からベンチマーク制度創設に向けた基本的検討がスタートしています。現在、全産業の70%が対象になることを目指し、また現時点で確立した制度の対象を拡大することを視野に入れ、[i1] ベンチマークの指標基準に関して制度[i2] 具体化の研究がワーキンググループ等により進められています(資源エネルギー庁「ベンチマーク制度の今後の進め方について」、「ベンチマーク制度の概要について」)。

中小企業に対する「電気の需要の平準化」措置の深刻な影響

改正省エネ法の目玉となっている「電気の需要の平準化の推進」措置は、法施行日からの日数経過につれて、企業にさまざまな影響を徐々に与えつつあります。

上述したように「電気の需要の平準化」とは、季節と1日の時間帯ごとの電力消費の格差縮小措置を指しています。電力供給においては、常にピーク需要に合わせた規模の発電・送電設備の整備・運用が不可欠になっています。このため、電力消費の格差拡大は、発電・送電設備の稼働率低下と電力コストの上昇を招きます。

そこで電気事業者は格差拡大を防ぐため電力消費状況を常時監視しています。そして電力供給が限界に近づくと、電力消費者に対する電力消費削減要請、電力供給停止などの強制措置発動が、電気事業者は法的に認められています。

こうした切迫した事態回避策が「電気需要の平準化推進」の目的とされています。これを消費者側から見ると、「事業者が取り組むべき措置に関する指針」に示された「チェンジ」「シフト」「カット」を実現するための新規設備投資を意味します。

しかし大企業はさておき、電力需要の平準化に対応するための新規設備投資負担に耐えられる中小企業は少数でしょう。大半の中小企業は負担に耐えられないため、エネルギー効率の悪い従来設備を平準化時間帯に稼働せざるを得ません。このような条件で電気需要平準化措置の要件をクリアするためには、設備稼働日数・時間を縮小するか、深夜勤務・土日勤務を採り入れるしかありません。これでは必然的に生産性の低下や従業員の負担増を招きます。

改正省エネ法を推進するため、資源エネルギー庁は「エネルギー使用合理化等事業者支援補助金」、「エネルギー使用合理化特定設備等導入促進事業費補助金」などの、いわゆる「省エネ対策補助金」を予算措置しています。しかし、いずれも補助金には限りがあります。補助金受給の審査も厳しいといわれています。中小企業の大半はまさに「胸突き八丁」状態になっているといっても過言ではないでしょう。

一石二鳥の抜本的解決策はEMS

とはいえ、改正省エネ法は「事業者が取り組むべき措置に関する指針策定」における「カット」対策として、エネルギー消費の合理化徹底、電力消費量の計測管理徹底、電気需要平準化に有効なEMSなど、総合的エネルギー管理サービスの利活用促進を掲げています。

これらのカット対策は、換言すれば「電力消費の可視化対策」になります。

この対策には、可視化により

  1. 「電力消費のムリ・ムダ・ムラ排除」の意識が強まり、電力消費削減の継続的活動が可能になる
  2. 機器・設備ごとの電力消費量が一目瞭然になるので、電力消費削減の優先順位付けによる計画的措置対応が可能になる。結果的に生産性低下の防止が可能になる
  3. 電力消費はもとより温湿度の適正管理もできるので、従業員の労働環境に配慮した措置対応が可能

などのメリットがあるようです。この可視化対策なら、中小企業も導入負担に耐えられると見られています。

したがって、中小企業は「電気の需要の平準化の推進」措置を経営のどこに位置付けるかが、今後の盛衰を左右するといえるでしょう。

参考: