ファシリティマネジメントとは? 従来の「施設管理」とは大きく違う!

ファシリティマネジメント

近年、特に2011年3月に発生した東日本震災以降、ファシリティマネジメントへの関心が高まっています。店舗経営者やビルの施設管理者であれば、ファシリティマネジメントという言葉は耳にされているのではないでしょうか。しかし「ファシリティマネジメントとは何か?」という質問に、明快に回答することは、そう簡単ではないでしょう。

企業の経営資源は、人材、資金、情報に加えて、物(ファシリティ)があります。そのためファシリティは「第4の経営資源」とも言われています。ファシリティを総合的・戦略的に活用することは企業にとって大きなテーマです。

では、ファシリティとは一体なんでしょうか。まずはファシリティの意味を辞書で調べてみましょう。すると「容易なこと」「便利さ」のほかに、「便宜を図るための設備」などと書いてあります。ここからファシリティは、ビジネスの世界では「企業や団体の経営に関わる全ての設備や機器」を指す言葉として使われているのです。具体的には、土地、建物、施設の什器、そしてそれらが形成する環境(執務空間、居住空間)のことになるでしょう。

公益社団法人日本ファシリティマネジメント協会(JFMA)においては、ファシリティマネジメントは「企業・団体等が保有又は使用する全施設資産及びそれらの利用環境を経営戦略的視点から総合的かつ統括的に企画、管理、活用する経営活動」と定義されています。単に手法というより、広く経営的視点に立った総合的な活動として捉えられています。

ファシリティマネジメントに取組むにあたっては、新築してから取り壊すまでに必要な総費用、つまり建物のライフサイクルコスト(LCC)の考え方が求められます。例えば、一般的なビルは、LCCの70%近くが竣工後の費用といわれています。効率的なビル経営を行うファシリティマネジメントの場合、ランニングコストの削減が重要なミッションになります。そのための行動としては、以下のようなものがあります。

  • 建物の経年劣化を抑えるために定期的な修繕を行うこと
  • エネルギーの最適化を図るために省エネ性能が高い空調、照明機器を導入したり、建物の構造を熱を遮断するようにしたりという工夫を行うこと
  • 防災対策、耐震構造にすることで安全な環境を保つこと

その他もちろん、防犯対策も重要です。こうしたビルの「機能」だけの話ではなく、外観や機能などを魅力的なデザインにし入居者や利用者に魅力的に映るようにすることも、建物の価値を長続きさせるための重要なマネジメントなのです。

 

従来の施設管理

ファシリティマネジメント

性質

「施設」の管理

「施設経営・戦略」の管理

目的

施設の維持・保全

施設・資産の最適化

対象

施設

全固定資産が対象

基準時

現状

ライフサイクル・将来まで

担当組織

総務・施設など

部門横断的

関連知識

技術

建築・不動産・設備機器の知識

建築・不動産

財務・経営・情報

環境・心理・人間工学

参考:東急建設のFM

ファシリティマネジメントは、これまでの「施設管理」と大きく異なります。単に、施設の保全を行うというだけでなく、施設の価値を最大限に引き出すために知識、技術を結集させ長期的視野と計画性を持って取組み、かつ最適化を検討するマネジメント業務のことなのです。

ファシリティマネジメントは、何のために必要なのでしょうか。それは、「施設の価値」が非常に大きなことに起因します。例えば、ビル一棟の建設といっても数十億程度、大規模な複合施設ともなれば、数百億円の初期費用(設計費・工事費など)が発生します。また、施設や建物が完成してから発生するランニングコストも非常に大きな金額です。ランニングコストは施設や建物が竣工してから利用・運営する限り発生するものですから、数十年単位で累積することになり、イニシャルコストと比較して何倍も大きな金額となります。このように「施設」は建設から数十年間運用するまでの間に莫大な費用が投入されることになります。そのため、効率的な施設運営というのは、自然と経営的視点が重要になってくるのです。

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つまり、ファシリティマネジメントの目的は、企業が使用するファシリティの全体最適化にあります。それには、固定資産について「資産価値・使用価値の最大化」と「コストの最小化」という2つの視点における要求を両立させる必要があります。経営的な視点から期待されるファシリティマネジメントの効果をまとめると、以下の4点に要約されます。

  1. コスト最小化
    LCC(ライフサイクルコスト)、設備投資、施設運営費の最小化
  2. エフェクト最大化
    利用者の満足度と生産性の最大化
  3. フレキシビリティの高さ
    施設管理業務を標準化(属人性を排除)することで、将来的な経営環境の変化に柔軟に対応
  4. 社会・環境対応
    企業の社会的責任(CSR)に関する諸活動、環境問題への効果的な取り組みの実施

ここでもう一度ファシリティマネジメントの定義をおさらいしておきましょう。JFMAでは「企業・団体等が保有又は使用する全施設資産及びそれらの利用環境を経営戦略的視点から総合的かつ統括的に企画、管理、活用する経営活動」と定義しています。そのため、ファシリティマネジメントは、本社、支社、オフィスなどの社屋はもちろん、工場、物流施設、倉庫、店舗など、あらゆる業務用不動産とその環境を対象としています。また「企業・団体等」には、営利企業や官公庁、病院、学校などの教育機関、その他全ての事業体が含まれます。現に、ファシリティマネジメントは、今や政府、自治体、民間企業に至るまでに広く普及しています。

国土交通省では、2006年、社会資本設備審議会建築分科会によって官公庁施設部会が設置され、国家機関の建築物が直面している課題について、様々な議論がなされました。その結果、「国家機関の建築物を良質なストックとして整備・活用するための官庁営繕行政のあり方について」と題された建議がまとめられ、その中で効果的なファシリティマネジメントに取組むべきとしています。財務省でも2010年の「新成長戦略」の策定にあたり、未利用国有地等の有効活用というテーマについて検討が重ねられてきました。その中で、庁舎等施設の効率利用、多機能化や集約化、そして緑の都市化(グリーン化)への貢献のため、ファシリティマネジメントの手法を採用していくことが明記されています。

地方自治体においても、財政逼迫、人口減少などの要因が重なり、近年ファシリティマネジメントが注目されています。例えば、群馬県前橋市では、2012年に閉店した既存商業施設をコンバージョンすることで、「アーツ前橋」という美術館へと改修したプロジェクトが有名です。建物の建て直しの費用を抑えつつ、中心市街地の発信拠点施設へと生まれ変わらせた事例です。

そして、国や地方自治体だけでなく、日本の民間企業・団体の多くも経営改革を迫られています。企業の経営を著しく圧迫しているのが、バブル時代に急増した施設にかかる多額な維持管理費・マネジメントコストです。これらの施設関係費は人件費に次いで大きい割合を占めるものの、未だ十分な対策は採られていないというのが現状です。バブル時代の設備は、円滑な業務推進、省エネルギー、環境問題、防災上の観点から改善する必要のあるものが多く、今後、いかに効果的にファシリティマネジメントを実施していくかが、日本経済の健全化へのひとつの条件ともなっていくでしょう。

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