電気料金の明細票に記載されている「再エネ賦課金」の文字。この再エネ賦課金とは何のためのものなのでしょうか。再エネ賦課金について、目的や発足の経緯、またこれから先どうなっていくのかの試算と専門家による指摘をご紹介します。
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再エネ賦課金の概要
再エネ賦課金とはどのようなもので何に使われるお金なのでしょうか。その概要と目的を見てみましょう。
再エネ賦課金とは
再エネ賦課金とは、再生可能エネルギー発電促進賦課金のことで、「電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法」(再生可能エネルギー特別措置法)により、2012年7月に定められた制度です。その前身となったのは太陽光発電促進付加金で、こちらは2014年9月に終了し、再エネ賦課金へと一本化されました。
関西電力によると、次のように説明されています。
再生可能エネルギー発電促進賦課金とは
「再生可能エネルギー発電促進賦課金」(電気料金の一部)とは、「再生可能エネルギーの固定価格買取制度」によって電力の買取りに要した費用を、電気をご使用のお客さまに、電気のご使用量に応じてご負担いただくものです。
(引用:再生可能エネルギー発電促進賦課金|関西電力)
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このように再エネ賦課金とは、太陽光や風力、水力、地熱、バイオマスなどの再生可能エネルギーによって発電した電気を電気事業者が買い取り、その費用を電気契約者全員で負担するお金、またはその制度のことです。
再エネ賦課金の目的と使いみち
資源エネルギー庁によると、再エネ賦課金は再生可能エネルギーの導入を支え、ゆくゆくは発電設備建設にも活かされ普及促進につなげるために役立てるとされています。
再生可能エネルギーによる発電が普及することにより、日本のエネルギー自給率が向上します。これにより化石燃料に対する依存度が下がり、燃料価格が大きく変動した際にも電気料金を一定の幅で安定化することができるという狙いもあります。これは電気利用者全員にメリットがあるという観点から、全利用者が賦課金という形で負担する仕組みになっています。
再エネ賦課金の算定方法
再エネ賦課金の算定方法は次のように定められています。
電力使用量(kWh)×再エネ賦課金単価2.64円=再エネ賦課金
(注)再生可能エネルギー発電促進賦課金単価は、買取費用に応じて交付される交付金の見込額と、電力会社等の想定供給電力量等をもとに国が定めます。
ただし、大量の電力を消費する事業所で国が定める要件に該当する事業者は、再生可能エネルギー賦課金の額が減免されます。
(参考:減免認定手続|なっとく!再生可能エネルギー)
再エネ賦課金の経緯
再エネ賦課金はどのような経緯でスタートしたのでしょうか。
再生可能エネルギー特別措置法
「電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法」(再生可能エネルギー特別措置法)の前身となったのは、「電気事業者による新エネルギー等の利用に関する特別措置法」(RPS法)です。
これは2003年に制定され、再生可能エネルギーの普及にある程度の成果は見たものの、エネルギー政策の大きな変革とまではいえないものでした。発電した電気の買取制度について議論された結果、2009年に自家用太陽光発電の余剰電力買取制度が開始します。
2012年、太陽光のみだった買取制度を再生可能エネルギー全体に広げ、さらなる再生エネルギー普及を目指して策定されたのが、この再生可能エネルギー特別措置法です。これにより、買取制度の対象は太陽光、風力・水力(3万kw未満)、地熱、バイオマス(動植物に由来する有機物であってエネルギー源として利用することができるもの)となりました。
固定価格買取制度(FIT)
再生可能エネルギーの固定価格買取制度(FIT)については、資源エネルギー庁のウェブサイトで次のように説明されています。
「再生可能エネルギーの固定価格買取制度」は、再生可能エネルギーで発電した電気を、電力会社が一定価格で買い取ることを国が約束する制度です。
(引用:なっとく!再生可能エネルギー 固定価格買取制度|経済産業省 資源エネルギー庁)
この制度はフィードインタリフ(Feed-in Tarif)と呼ばれ、FITと略されることもあります。エネルギーの買取価格を法により定めた助成制度が、このFIT(=固定価格買取制度)です。
再エネ賦課金はこれからどうなっていくのか
このような経緯からスタートした再エネ賦課金と再生可能エネルギーは、これからどうなっていくのでしょうか。
現段階において、固定価格買取制度の導入により太陽光を中心に再生可能エネルギーの普及は進んでいます。しかしこれと比例して、再エネ賦課金の額も年々上がり続けており、今後さらに上昇していく可能性があります。
電力中央研究所による試算では、2030年にFIT総額が4.7兆円、政府試算で3.7兆~4兆円になるとされています。標準家庭において、2012年にはひと月あたり62円だった再エネ賦課金は、2017年には792円になっています。もしこの試算通りになった場合、2030年の再エネ賦課金はひと月当たり1300円まで増大すると予測されています。
このように負担額が膨らみ続けていくことについて、専門家からも懸念の声も上がってします。
また再生可能エネルギーの比率が高くなるほど、貯めておくことのできない電力の供給は難しくなる仕組みであることにも触れ、蓄電テクノロジーの大きな進歩がない限り、何かしらの見直しが必要との考えを示しています。
このように、再生可能エネルギーと再エネ賦課金には課題が多いのも事実です。
再エネ賦課金の動向に注目
再生可能エネルギー発電促進賦課金、通称「再エネ賦課金」について、概要や目的、算定方法を解説しました。また再エネ賦課金が制定されることになった経緯をご紹介しながら、これからの再生可能エネルギー政策と再エネ賦課金の課題についても触れました。再エネ賦課金はこれからどうなっていくのか、家計に直接響く負担金となるだけに、今後の動向から目が離せません。
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