周波数と波長のまとめ―身近なものからはるか彼方まで

周波数と波長について解説します。周波数とは何か、どのような定義で求められ、どのように測定するのか。また同様に波長についても、その定義と求め方、さらには宇宙観測と波長の関係をご紹介します。

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周波数

周波数について、身近なものを例に見てみましょう。

商用電源周波数

身近でよく耳にする「周波数」といえばたいていあるものを指します。

それが電化製品の周波数です。50Hz用とか60Hz用といった表記を見たことがある方も多いと思います。

日本の電気は、電力会社から送られる交流電源について、糸魚川静岡構造線を境に東側が50Hz、西側が60Hzと異なっています。電化製品の一部はこの周波数の違いにより、異なる周波数地域では使えないものがあるため注意が必要です。

明治時代に、大阪の電力会社がアメリカ製の60Hzタイプ発電機を使用したのに対し、東京の電力会社はドイツから50Hzタイプの発電機を導入しました。そこから次第に、各地の電力供給がこのどちらかへと集約されていった結果、今のような周波数の境界線ができあがったのです。

周波数の意味と定義

本来の周波数とは、交流電流、音波、電波などの周期的現象における1秒あたりの振動回数を表したものです。振動数と呼ばれることもあり、振動の周期は周波数と逆数の関係にあります。

周波数の求め方

周期的現象において、周期を T [s] とすると、波の周波数 f [Hz] は次のように定義されます。

f=1/T  [Hz]

ここで、波の速さを v [m/s]、波長を λ [m]とすると

vT=v/f=λ [m]

となり、ここから次の関係が成り立ちます。

f=v/λ  [Hz]

また真空中を進む電磁波の場合は、その位相速度 v は光速 c に等しいことから次のようになります。

f=c/λ  [Hz]

例えば波長が5,000[km]の電磁波では、次のようになります。

f=c/λ=300,000/5,000=60[Hz]

このように、60Hzの電磁波は光と同じ速さで進み、波長が5000kmであることがわかります。

周波数の単位

周波数の単位にはヘルツ(Hz)が用いられます。

これはドイツの物理学者、ハインリヒ・ルドルフ・ヘルツの名前からとられたものです。物理学者ヘルツは、マクスウェルの方程式を実験により検証し、肉眼では見ることのできない不思議な電磁波というものが確実に存在することを証明した人物です。この実験は、後世の物理学者たちによって理論付けられ、無線通信技術の発展へとつながっていくきっかけとなりました。

このHzという単位は、1930年に国際電気標準会議(IEC)で制定されました。それまではサイクル毎秒(c/sまたはcps)という単位が用いられていましたが、1960年に国際度量衡総会(CGPM)が制定したSI単位系列には採用されず、同じ量を表すHzに置き換えられることとなりました。日本の学問分野においても、1972年7月1日をもってHzに統一されています。ただし計量法においては、全面改正される1997年9月30日までサイクル毎秒が用いられていました。

周波数の測定方法

周波数の測定には周波数カウンタという測定機器がよく使われます。
これは水晶振動子を使ったデジタル回路により、入力された電気信号の周波数を測定し表示するものです。電気信号として入力できない物理的な振動を測定する場合は、トランスデューサー(変換器)により電気信号へと変換後、周波数カウンタへと入力します。この周波数カウンタで測定できる周波数は100GHz(ギガヘルツ)程度までが限界であり、これ以上の周波数を測定するためには変換技法により求めることとなります。

それがヘテロダインと呼ばれる周波数変換技法です。
これは、測定したい周波数の信号に対し、基準となる既知の周波数の信号を混合してやることにより生まれる「うなり」を測定し、基準の周波数との差分から間接的に測定値を求めるという技法です。この方法を数段階用いることにより、より高い周波数の赤外線や可視光の一部まで、その周波数が測定可能です。

 

波長

次に波長について説明します。

波長の意味と定義

波長とは、電磁波や音波などの周期的現象において、波の山から次の山、または谷から次の谷までの水平距離であり、ひと波分の長さを指します。

波長の求め方

波数をk、角振動数をω、波の位相速度をv、周波数をfとしたとき、波長は次のように定義されます。

λ=2π/k=2πv/ω=v/f

波長の単位

波長はその名の通り波の長さを表します。よって単位にはメートル(m)が用いられます。

光の波長の測定方法

一般的に光の波長測定には、分光光度計または光スペクトラムアナライザと呼ばれる測定器が用いられます。
これらよりもっと手軽で安価な方法として、プリズム分光器によって光を分光し、その色からおおよその波長を推測することもできます。しかしこの方法は、色の濃淡から判断することになるため個人差もあり、正確な波長は測定できず、さらに紫外線を見ることはできません。

分光光度計は、人間の目では判別不可能な色を検知器やメーターによりスキャンし、波長を測定することができます。

一方、光スペクトラムアナライザは光スペアナと呼ばれることが多く、電気測定におけるスペクトラムアナライザに相当するものです。電気信号を周波数ごとに分け、目に見える形で表示する測定器です。

インターネットを含む現代のさまざまな通信を支える光ファイバ通信は、光ファイバの中に光信号を通して行う通信技術ですが、ここにも波長は大きく関わってきます。光ファイバのなかで損失の小さい波長は1.3µmと1.55µmであることがわかっており、現在はこの波長帯が主に使われています。

こういった光通信技術の測定においても、光スペアナが使われています。

電磁波の波長による呼び方

電磁波は波長によっていろいろな呼び方があります。

無線通信やラジオ、テレビなどの電波は、電磁波のうちでも0.1mm以上と比較的波長の長い帯域が使われています。そして前述のような、光通信で使う1.3µmと1.55µmといった波長帯の電磁波は、赤外線に含まれます。また人間の目で見ることのできる可視光線は、0.3µm~0.8µmの範囲内のもので、ここからさらに波長が短くなると紫外線となります。電磁波は、0.01µm以下になるとX線と呼ばれ、レントゲンに用いられるものとなり、さらにより短いものはγ(ガンマ)線と呼ばれるようになります。

波長で見る宇宙

宇宙の神秘を研究するため、宇宙空間から天体を観測する宇宙望遠鏡というものがあります。実はこれにも波長は大きく関わっています。宇宙望遠鏡は、はるか彼方の天体から届く電磁波を観測しているのです。

これは、電磁波の大部分が大気によって吸収されたり、揺らいでしまったりするため、宇宙空間で観測すること、また電磁波の波長ごとに観測できる天体現象の種類が異なるためです。

フェルミガンマ線宇宙望遠鏡と呼ばれる宇宙望遠鏡は、γ線によりブラックホールなどの高エネルギーを持つ天体を観測しています。日本の宇宙X線観測衛星あすかは、X線により銀河団や超新星など、さまざまな種類の天体観測が可能です。この他にも紫外線、可視光線、赤外線による観測、さらにはマイクロ波、電波、素粒子、重力波など、人類はさまざまな波長の電磁波を通して宇宙を観ているのです。

 

身近なものからはるか彼方まで

周波数と波長について、その意味と定義、測定方法などについてまとめました。ハインリヒ・ヘルツが電磁波の存在を証明してから130年余りがたちます。その間に人類は、周波数と波長を応用したさまざまな技術を発展させてきました。このように周波数や波長は身近な場所にあふれ、人類の文明を支えると同時に、はるかな宇宙の研究にも役立っているのです。

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