2016年から低圧電力の小売が自由化。そもそも高圧、低圧の違いって?

2016年から低圧電力の小売が自由化され、新電力(PPS)という言葉もよく聞かれますが、この「低圧」とは何を指すのでしょうか。また「高圧」との違いはどこにあるのでしょうか。高圧と低圧の違いと、地域の電力会社だけでなく新電力も含めて自由に選ぶ際のポイントを、ご紹介します。

 

電力の小売自由化で、なぜ電気料金が安くなるのか?

2016年4月1日から低圧電力の小売が自由化され、家庭や商店を中心とする低圧需要家も自由に小売電気事業者を選べるようになりました。電力の小売自由化はすでに、特別高圧需要家向けを2000年から、高圧需要家向けを2004年から段階的に始めており、2017年11月2日現在合計434の事業者が登録されています。電力市場はこれまで全国で合計10社の地域の電力会社による寡占市場でしたから、多くの事業者の参入で、より競争力のある電気料金が提供されるようになりました。

電力自由化により電力小売市場に参入した小売電気事業者は新電力(PPS)と呼ばれますが、発電所を建設して参入するPPSは少なく、基本的には発電はしないで既存の発電会社から電力の供給を受けて小売します。従来の大規模の電力会社よりも小規模で、送電線などは既存のものを利用するため、設備費や人件費が安く抑えられることでPPSの提供する電気料金は低くなります。また自社発電設備のある工場などで余った電力を安く購入して転売したり、高圧向けの安い電力を購入して低圧向けに小売したりすることでも、低料金の電力の提供につながっています。

高圧と低圧の違い

発電所で発電される電気は通常50万ボルト近くの高い電圧ですが、さまざまな規模の変電所を通って電圧を下げながら最終需要家に届きます。どこまで下がった電圧を引き込むかで、高圧契約者と低圧契約者に分かれます。

高圧電力契約と低圧電力契約の違いは、以下の通りとなります。

  • 規模:高圧は工場、商業施設、病院などの大型の事業所で、低圧は一般家庭や商店などの小口電力消費者となります。
  • 契約電力:高圧は50キロワット以上、低圧は50キロワット未満となります。
  • 受電方法:高圧は6600ボルトを事業所内に設置されたキュービクル式高圧受電設備(キュービクル)
  • コストの違い:高圧は事業所にキュービクルを設置・維持する必要があるため、固定費の占める割合が増えますが、電気代の単価は安くなります。低圧の固定費は基本料金のみですから、電気使用量に応じた電気代の変動費の割合が大きくなります。

自由化で増えた電力会社。電力会社を選ぶポイントとは。

電力の小売が自由化されましたが、電気の供給にともなう契約先が変わるだけで電気の質自体は変わりません。電力会社を選ぶ際にはどのような点をポイントに比較し、どのような点に注意したらよいかをまとめてみました。

  • 電気料金体系と単価を比較する。電気料金は通常使用電力量により段階的に設定され、また使用時間帯によっても単価が変わる設定になっている場合もあるため、普段の使用電力量や使用時間を考慮して得になるところを選ぶ。
  • 付加価値サービスはあるかを確認する。ガス代や携帯電話代などとセットにした割引を提供しているところもあるので、他のサービスも含めて考慮する。
  • 契約期間や中途解約条件をチェックする。契約期間満了前の解約時には、解約違約金が取られることがある。
  • 新電力は一般的に従来の電力会社よりも小規模の事業所となるため企業体力があまりなく、問い合わせ対応が遅れたり、倒産する可能性もあるため、サービス体制や会社の財務状態もチェックする。
  • 中長期視点で、太陽光発電などの再生可能エネルギー比率が高い電気を提供する、エコな事業所を選ぶメリットも考慮する。
  • 集合住宅で建物単位で電力会社と契約しているところでは、個別の契約変更はできないので注意する。
  • いったん一般電気事業者を解約して新電力と契約すると、後で一般電気事業者に戻ろうとした際に、前の電力メニューで契約できない可能性もあるので、注意する。

新電力への契約変更は多面的に検討しよう。

高圧・低圧の違いと、新しい電力会社を選ぶポイントを紹介しました。低圧電力消費者への電力の小売自由化が始まり、より安い電気料金や付加価値をつけたサービスを提供する電力会社への契約変更が可能になりました。新電力への契約変更を検討する際には、電気料金だけでなく信頼性や付加価値なども考慮して最適かつメリットのあるプランを選びましょう。

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参考: