電気の「周波数」とは?

「周波数」とは、1秒間に電気の流れる方向の変化した回数のことを言います。単位は「ヘルツ(Hz)」です。日本で使われている電気は東日本が50ヘルツ、西日本が60ヘルツです(東西の境目は静岡県の富士川と新潟県の糸魚川あたり)。 つまり東日本では1秒間に50回も電気の流れる方向が変化しているのです。

では、なぜ東西で周波数に違いがあるのでしょうか。それは明治時代に遡ります。当日の日本では電気をつくるための発電機を外国から輸入する必要がありました。そこで、東京電灯浅草発電所が「ドイツ製発電機(50Hz)」を、大阪電灯幸町発電所が「アメリカ製発電機(60Hz)」を導入したため、周波数に違いが生まれたのです。

その後、大正時代初頭から第2次世界大戦直後までの間に4回の周波数統一の動きがありました。周波数が違うと東西で電力融通ができないのです。しかし、莫大なコストと時間がかかることと、設備の改造過程で供給力不足を招く可能性があることから実現されず、今に至るまで2種類の周波数が使用されています。

2つの周波数が使用されることの問題点として、東西で融通し合う電力量に制限がかかってしまいます。現在は佐久間周波数変換所(静岡県)、新信濃周波数変換所(長野県)、東清水周波数変換所(静岡県)の3か所で、周波数変換され、電力融通がおこなわれています。

変換設備の合計容量は120万kWですが、実際に使える能力は40万~55万kW程度です。2015年度の電力10社の発電設備合計出力は約2.09億kWですから、その少なさがわかると思います。

電力10社発電設備 最大出力積み上げグラフ(2015年度)

また、家庭で使用する電気器具も、型番の近くに「50Hz」か「60Hz」、あるいは「50/60Hz」と表示のあるシールが貼られているかと思います。「50/60Hz」の表記のものは全国で使用できますが、「50Hz」または「60Hz」としか書いていないものはその地域でしか使えません。これを間違えて違う周波数のものを使ってしまうと、器具の損傷や性能低下を招いたり、最悪の場合火災が発生してしまいます。引っ越しをする際には電気器具の周波数を確認しましょう。

2011年3月に起きた東日本大震災以降、日本全国の原子力発電所のほとんどが再稼働出来ない状態が続いており、電力不足が懸念されています。周波数の違いによる東西の電力融通に制限のある状態がこのまま継続すれば、大規模停電の発生が心配されます。

経済産業省は、周波数が異なる東日本と西日本の間で融通できる電力を、2020年代後半にも現在の約2.5倍に拡大する方針を固めています。総工費は1,700億円超を見込んでおり、沖縄電力管内を除く各地の電気料金に上乗せして回収する考えです。東西間でやり取りできる電力の大幅な増加により、地震などの大規模災害で発電所が被災した際にも、他地域からの融通で電力不足を防ぐ狙いが有ります。

電気を使う私たちも普段より節電を心掛け、不測の事態に備えておく必要が有ります。限りある資源を有効に活用していきましょう。

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