一から学ぶ電力自由化(第六回)切り替えの手順

電力自由化

 電力広域的運営推進機関は、2016年4月の電力自由化から1年9か月で、電力の購入先を新電力へ変更した契約件数が610万9600件となり、600万件を突破したことを発表しました。契約件数をエリア別にみると、首都圏が全体の49.7%で、関西圏が20.9%。両エリアで全体の7割以上を占める状況が続いていますが、他のエリアが少しずつシェアを増やしていることがうかがわれます。

 今回は、電力を現行の大手電力会社から、新電力に切り替える手順について確認して参ります。

 まず最初にやるべきことは、年間の電力使用量情報など電力データの準備、電力会社への見積り依頼です。高圧電力は、自社の施設が年間でどの程度の電力を使用するのか、その見込み量を算出する必要があります。また、プランによって単価も異なるため、現在の電力会社から毎月頂く電力料金の請求書、明細書(これらを電力データといいます)を12ヶ月分準備する必要があります。なお、電力会社から請求書が送られてくることがなく、顧客向けWebサイトでダウンロードできる場合は、請求書等の準備の必要はありません。
 12ヶ月分の電力データがない場合は、例えば4月の電力量を「100%」とした場合、7月は「150%」とするなど、いわば重みをつけて算出することとなります。一定の精度を図ることはできますが、やはり実データ以上の正確性はないので、12ヶ月分の電力データのご準備が基本となります。
 なお、この電力使用量はあくまで過去1年間分の電力使用量ということになりますので、例えば「来年、太陽光発電システムを屋根に載せる予定である」「LEDを全店に導入する予定である」という情報は、見積りの精度を大きく損なうことになります。省エネ実施状況も、きちんと新電力にはお伝えしておいたほうがよいでしょう。

 続いて、新電力に電力データを渡して見積り作成を依頼することになるのですが、ここで依頼すべき新電力を選定するときに注意すべき事項は、次の点です。

  • 当該新電力が、価格を下げて見積もることのできる根拠

 実は、新電力の中には自社の電力調達費用を正確に把握していないという会社があります。日々変動する電力卸売市場から電力を調達している場合、その日々の電力調達費用をきちんと把握するように分析をしないと、自社商品のコストが分からないなどという、笑えないお話になってしまうのです。
 そのため、新電力にどのような電力の調達の仕方で、電力を安く調達してきているかをお伺いすることはとても重要です。ここで曖昧もしくは納得できない回答であった場合、その新電力は敬遠すべきでしょう。

  • 当該新電力の本業、信頼性

 また、その会社がいつでも倒産できるかどうか、いわば電力事業で利益が出ないから需要家を放っておいて逃げてしまったというケースももちろん心配です。現に、2015年度の新電力事業売上で業界5位であった日本ロジテック協同組合が、2016年4月15日に破産手続開始決定を受け、事実上の倒産となりました。負債総額は約163億円だったそうです。新電力として最大の倒産で、新電力業界では「ロジ・ショック」とも言われています。このロジテックの特徴は「急成長をしていた」ということです。同組合の売上高は、2012年度は4億2,600万円でしたが、契約数の増加から2015年度の売上高は約555億7,700万円と驚異的な伸びをみせていました。電力供給は全国に約9,000カ所にのぼっていました。しかし、電力という商品は常に仕入れ続けていなければならない性質であるため、需要家が増加する、供給電力量が増える、というのは喜ばしいことであると同時に、その分の電力量を常時仕入れなければならないため、費用も倍増していくという高いリスクを負ってもいたのです。結果、関係会社を通じて建設を予定していた発電施設への資金負担など、大きな費用が重荷となり、資金繰りは悪化してしまい、最終的に破綻してしまったのです。
 このため、新電力の会社の信頼性を把握するためには、単に資本金や販売実績だけでなく、本業の有無、電力管理能力の担保などを総合的に加味しないと需要家にとってもリスクが大きくなることには注意が必要です。

 信頼できる新電力から、信頼できる見積もりを受け取ると、電力切替を真剣に検討する段階に入ります。ここでは、新電力の約款と、契約書の確認が求められます。
 一般に、「電気需給約款」「電気需給契約書」という書面なのですが、ここに料金の支払い方、検針期間などの基本情報のほか、解約の場合の違約金、解除条件などが記載されています。特に注意すべきは、契約期間と解約違約金の項目になります。新電力は、原則的には1年間の電力需給契約を結ぶことになります。1年経過後は、3ヶ月以内に申し出れば解約できる、という文言であることもありますが、1年経過後は自動的にもう1年の延長をする、という内容としている新電力も珍しくありません。この場合、解約違約金を支払わずに新電力から別の電力会社に替えられるのは1年待たなくてはなりません。特に、大手電力会社が囲い込み目的で設定することのある「長期割引」の場合、5年、7年など非常に長い年数での固定契約を余儀なくされることもあるので要注意です。

 こうして約款、契約書の確認も終えて、相互に契約内容を了承し合うこと(マッチング)で、需要家はスイッチングを申し込みます。需要家が新電力にスイッチングを申し込むと、その情報をもとに広域機関の「スイッチング支援システム」が手続きを開始します。スイッチング支援システムを経由して電力会社の送配電部門にも情報が伝わって、契約の変更後も滞りなく電力が供給されることになる仕組みです。なおこの時に、以前の電力会社の電気料金を滞納している場合など、スイッチングの妨げとなる状態であるときはこのスイッチングは成立しないことになります。この場合、その妨げとなっている状態を解消してから再度スイッチングを行わなければなりません。

 スイッチングが適正に行われると、最後にスマートメーターの取付をもって、電力切替は完了します。スイッチングにはスマートメーターが必要です。新電力会社は、日本全国に検針員がいるわけではないので、遠隔で料金を確認するためにスマートメーターが必要だからです。しかし、スマートメーターが家に既に設置されていればいいですが、ない場合は電力会社の送配電部門は取替え工事にすぐに対応しなければなりません。通常は、契約が成立した日(マッチング完了日)から起算して8営業日に2暦日を加えた日(標準処理期間満了日)以降の最初の定例検針日を原則、スイッチングの日とすることとされています。電力会社の送電部門は、この標準処理期間満了日までにスマートメーターの設置工事を終えなければならないのです。
 スマートメーターの設置工事完了で、需要家は電力の送り元を切り替えることができたことになります。

お役立ち資料ダウンロード