株式会社スターメンテナンスサポートは、CSR(企業の社会的責任)活動の一環として売上の一部をフードバンクへ寄付しています。
本記事はフードバンクの取り組みを多くの方に知っていただくため、当社が寄付をしている一般社団法人ジャパン・フードバンク・リンクの理事長である村井哲之氏に寄稿いただきました。(原稿を4分割しており本記事は2/4にあたります)
立ち上がった「ジャパン・フードバンク・リンク」(通称:JFL)
日本の現状がわかったところで世界に目を向けて見ると、フランスやイタリアなどでは法律により、企業は燃やすゴミは事業所(店舗)から出せなくなっていました。そうなると、フードバンクへの食糧・商品の提供は最もコストのかからない廃棄の最適化(削減)の手法となります。実際に、フードバンクへの食糧・商品の流れに拍車がかかりました。フードバンクに商品が溢れ、それらを使って低所得者向けの無料スーパーまで登場しました。2年前の秋には、日本最大の流通グループ傘下の食品スーパーを中心とした小売業のトップが大挙して視察に行きましたが、帰国後、日本でこうした流れに拍車が掛かることは終ぞありませんでした。
廃棄の最適化の真ん中に、フードバンクの持つ機能の活用を明確に位置付ける
同じ時期に、こうした世界的な潮流にいち早く目を付けた岡山の大手スーパーの幹部の方が、欧州の小売業と同じように、廃棄の最適化の中にフードバンクの徹底活用を明確に位置付け、瀬戸内海沿岸の各県の「フードバンク〇〇」を訪ね歩き、定期的な食糧・商品の引き取りを打診しました。しかし、どこのフードバンクも、前述した、
- 賞味期限が1ヶ月以上残っているものしか引き取りません
- 自分たちの事務所や倉庫に食糧・商品を持って来て下さい
- 引き取った食糧・商品に関して何か問題が起こった場合には責任を取って下さい
との相変わらずのスタンスでした。これでは、提供(寄贈)する側のリスクしか有りません。そこで仕方なく、大変な労力と時間を割いて、各県のフードバンクとの間で個別に、
- 賞味期限に関係なく(いくばくかでも)期限が残っていれば引き取る
- 2箇所の物流センター、及び、その県の主要店舗に月に1回決まった日に各店からの廃棄予定の食糧や商品を集めておくので取りに来る
- 引き取った食糧・商品に何かあった場合の責任は引き取ったフードバンク側が取る
といったことを内容とする契約書を相互に交わして回りました。
この様に苦労をして取り組みを始めた結果、1店舗当たり毎月バナナ箱2ケース分の食糧・商品(➀新商品販売や企画変更に合わせて店頭から撤去された食品、いわゆる、定番カット食品➁賞味期限が間近に迫り、販売できなくなった在庫品➂定番カット食品や販売期限切れ食品等の慣行的な返品➂製造過程での賞味期限等の印刷ミス、流通過程での汚損・破損などの規格外品➃食品メーカーや卸売側から小売店側に提供される食品系販売促進商品等々)が全店から集まり(月間で140ケース!)、それを各県のフードバンクが引き取りに来る流れが出来上がりました。しかし、各スーパーがフードバンク活動を開始するに当たり、個別に各フードバンクといちいち契約書を交わすのでは、スーパーからフードバンクへの食糧・商品の提供の流れは、太く、大きなものとして全国に拡がることはないとその幹部の方は考えました。そこで当時、スーパーの収益アップのソリューションビジネスを展開し、数多くのスーパーのお客様を抱えていた村井(一般社団法人ジャパン・フードバンク・リンク(JFL)の現理事長)に第3の団体設立の白羽の矢が立ちました。
JFLが当初目指したもの
こうした流れを受けて今から2年半前に、日本において食品ロス削減の世界に新たに立ち上がった第3のフードバンク活動推進団体であるJFLは、その目的として、『食品廃棄物の「再使用」「再利用」「再生化」を通じて“食物ロスのない世界”を実現すること。「再使用」の代表格であるフードバンクは勿論のこと、「再利用」である肥料化や飼料化、「再生化」であるバイオガス化などを適正処理、資源の有効活用という観点から最適な形でリンクさせる新たな仕組みを創出し、これらをもって日本の食料自給率、及び、食品リサイクル率の向上を目指します。』と掲げました。フードバンクの推進を、食品ロス削減の中の「再使用」促進として明確に位置付けたのです。そして、まず、全精力をスーパーが安心して食糧・商品を提供できるフードバンクのネットワーク創りと、そのための機動力を持ったフードバンクの発掘に注ぎました。
まず、➀賞味期限に関係なく(いくばくかでも)期限が残っていれば引き取る➁提供された食糧・商品は選り好みせずに引き取る➂引き取った食糧・商品に何かあった場合の責任は引き取り側をフードバンク側の加盟条件とし、中四国のフードバンクをJFLの食糧・商品受領団体としてネットワーク化しました。そして、白羽の矢を射た、フードバンク活動を廃棄の最適化の中核に位置付け、業界にイノベーションを起こした食品スーパーの方の人脈が岡山県周辺にあったことから、岡山県を食品ロス削減・要支援生活者の食による支援推進・実現最先端県にして、その成功モデルを全国に拡げて行くことを決めました。これを『岡山モデル』と名付け、岡山県のスーパーの店頭現場や食品メーカーの工場で発生する食品ロスを岡山県のフードバンク、社会福祉協議会、及び、子ども食堂等の食糧・商品を必要とする団体と有機的、かつ、効率的に結びつけ、リンクさせる。つまり、岡山県で排出される少なくてもまだ食べられる食糧・商品は廃棄に回り、行政の廃棄物焼却炉で燃やされることがない、新たな循環の環を創ることを本気で目指しました。
大手食品メーカーから直ぐに商品提供が!誰も引き取らなかったものに第二の命が!!
すると驚いたことに、直ぐに、日本では知らない人がいない東京に本社がある一部上場の大手食品メーカー2社から商品を提供したいと声が掛かりました。JFLが引き取った食糧・商品に何かあった場合の責任を一切提供者側に帰さない規約で運営されていることの確認は入念にされましたが、その後のJFLへの食糧・商品提供団体としての登録、そして、最初の寄贈商品があるとの一報が届くまでに3ヶ月を要しませんでした。
そして加盟から時間を置かず、後述する、保管倉庫を複数持ち、寄贈食糧・商品が出た際にいつでも引き取りに行き、要支援生活者の方々に日々届ける力を持ったA型雇用支援事業所を運営しているフードバンクに対して、2つのメーカーから、残念ながらヒット商品とならず数千単位の不良在庫となったレトルト食品が何度か届けられました。
また、責任は引き取った側が持つと腹を括ったことで、これまでどこのフードバンクも衛生面を懸念してい米飯(炊いたお米:スーパーでプラスチック容器に入れて売っている/お弁当やおにぎり工場に毎日納入している)についても、必ず毎日1工場当たり100kg~200kgも午前中の段階で余り(足らないことが無いように必ず余分に炊いているのです)、全量廃棄に回っていたのを、前述の岡山のフードバンクは2つの米飯工場に午前中の早い時間に引き取りに行き、直ぐに自らの事業所に持ち帰り自家消費分を確保したら、後は支援施設ごとに何十もの大小織り交ぜたタッパーに小分けして(勿論、ゴム手袋もきちんと装着)、お昼に向けて一斉に各施設に届けに向かいます。
後日、スーパーの店頭での米飯のkg当たりの販売価格でその寄贈金額を計算してみたら、何と年間で3千万円になりました。大変大きな社会貢献です。加えて、年間で100万円を超える廃棄コストの削減に繋がりました。
これまでフードバンクを懐疑的に見ていたスーパーや地元のフードバンクがJFLに加盟をし、取り組みのスタンスを変えた途端、店舗から集められた廃棄予定の食糧・商品の提供だけでなく、お互いの信頼関係が増すのを見て、そのスーパーのグループの中でお惣菜やお弁当を作っている工場から、こちらも朝一番に作り過ぎたお弁当を、近くの老人支援施設の朝食として提供をして頂くと言った、これまであり得なかった価値ある取組に発展をしていきました。
次回は2つの事業展開モデルと、その中で気付いたJFLの役割についてお届けします。
絞り出した智慧が結実!!加盟団体数日本一で気付いた自らの真の役割とは