平成31年度予算成立!省エネ設備投資に関わる補助金の動向【経済産業省】

平成31年(2019年)3月27日、平成31年度予算等が成立したと発表されました。
本記事では産業用、業務用に関わりの深い経済産業省管轄の省エネ設備投資に関わる補助金について取り上げます。

(※)以下の内容は、経済産業省および資源エネルギー庁発表資料と問い合わせによる情報をもとにしています。補助金の内容は公募要領の発表をもって確定となります。

経済産業省の省エネ補助金と言えば「エネルギー使用合理化等事業者支援事業(通称:エネ合補助金)」が有名です。
毎年度注目度の高いこのエネ合補助金は、29年度からは「省エネルギー投資促進に向けた支援補助金」というくくりでZEB、ZEH、省エネ建材の実証支援と一緒に予算付けをされていました。

▼エネ合補助金について詳しく知りたい方はこちらをご覧ください

経済産業省は“徹底した省エネルギーの推進”、“オイルショック後並みのエネルギー消費効率の改善”、“経済成長と世界最高水準の省エネを同時達成”という強い言葉を使い、省エネ法による規制強化と省エネ補助金などの支援策を講じることで、エネルギー消費効率を高めようとしています。
出典:省エネルギー投資促進に向けた支援補助金について|平成30年6月 資源エネルギー庁

毎年度さほどの変動なく続いてきたエネ合補助金ですが、今回創設される補助金が変化をもたらすかもしれません。

その補助金の名前は…

電力需要の低減に資する設備投資支援事業費補助金

です。なんと100.4億円の予算を計上しています。

発表資料を見てみると、これまでエネ合補助金については下記のような説明文がありました。

①省エネルギー設備への入替支援
工場等における省エネ設備への入替促進のため、対象設備を限定しない「工場・事業場単位」(複数事業者が連携する設備入替も含む)、申請手続きが簡易な「設備単位」での支援を行います。

平成30年度予算 省エネルギー投資促進に向けた支援補助金|資源エネルギー庁

これが平成31年度になると…

①省エネルギー設備への入替支援
工場等における省エネ設備や省電力設備への入替促進のため、対象設備を限定しない「工場・事業場単位」及び申請手続が簡易な「設備単位」での支援を行います。また、複数事業者が連携した省エネ取組への支援を強化します。

平成31年度予算案 省エネルギー投資促進に向けた支援補助金|資源エネルギー庁

…となっているんですね。別の資料では、下のようにも書かれています。

●省エネルギー投資促進に向けた支援補助金 551.8 億円(600.4 億円)
(電力需要の低減に資する設備投資支援事業費補助金、ネット・ゼロ・エネルギー・ハウスを活用したレジリエンス強化事業費補助金を含む)

産業・業務部門の省エネ化の推進や、自然災害等による大規模停電リスク・被害を低減するため、工場等の省エネ設備の入替等を支援。また、複数事業者が連携した省エネ取組への支援を強化。

経済産業省関係平成 31 年度当初予算及び平成 30 年度第2次補正予算の概要|経済産業省

複数事業が連携する取組についてはこれまでも存在しましたし、省エネ法の改正で一層強化されましたので特筆すべき部分ではありません。

特筆すべき部分とは、やはり省電力設備への入替促進です。

省エネ法で言う「エネルギー」といえば、電気、都市ガス、LPG、LNG、高炉ガス、ガソリン、灯油、軽油、重油、石炭など色んなものがありますが、ここでは「電気」に限っています。その理由はもちろん“自然災害による大規模停電リスク・被害を軽減するため”でしょう。

これは近年度重なる災害で重要視されている「重要インフラの強靭化」「防災、減災、国土強靭化対策」の一環なんですね。(他にガス、水道、石油コンビナートに対しても補助金や支援事業が組み込まれています)

 

具体的にどんな補助金なのか?

予算成立前、1月25日にはもう執行団体の公募が開始されており、3月5日には毎年度エネ合補助金を執行している一般社団法人環境共創イニシアチブ(略称:SII)が採択を受けています。

そこで公表されていた情報は下記のようなものです。

間接補助事業の概要について(予定)

【1.補助対象者】
全業種の法人及び個人事業主

 

【2.間接補助対象事業】
(1)工場・事業場単位:既設設備・システムの入替えや製造プロセスの改善等の改修やエネルギーマネジメントシステムの導入により、工場・事業場等における省電力対策を行う事業。
(2)設備単位:既設設備を、補助対象設備ごとに定められた省電力効果の高い設備への更新を行う事業。

 

【3.補助対象設備】
(1)工場・事業場単位:一定の要件を満たす全ての設備を対象とする。 ※具体的な要件については、経済産業省と協議の上決定する。
(2)設備単位:想定する補助対象設備は以下のとおり。 なお、補助対象設備については今後追加等があり得る。
<想定補助対象設備> ①高効率照明 ②高効率空調 ③産業ヒートポンプ ④業務用給湯器 ⑤高性能ボイラ ⑥低炭素工業炉 ⑦変圧器 ⑧冷凍冷蔵庫 ⑨産業用モータ
※具体的な基準については、経済産業省と協議の上決定する。なお、トップランナー制度対象機器の場合、トップランナー基準以上の設備を補助対象とする。

 

【4.間接補助対象経費(消費税及び地方消費税額は対象外)】
(1)工場・事業場単位:【2.間接補助対象事業】に要する経費のうち、機器又は設備の設計費・設備費・工事費
(2)設備単位:【2.間接補助対象事業】に要する経費のうち、機器又は設備の設備費

 

【5.1事業当たりの補助率】
(1)工場・事業場単位:1/4以内、1/3以内、1/2以内とする。 ※なお、補助限度額(上限額及び下限額)については、経済産業省と協議の上、決定する。
(2)設備単位:1/3以内とする。 ※なお、補助限度額(上限額及び下限額)については、経済産業省と協議の上、決定する。

 

【6.募集方法】 一定期間の公募により実施する。

出典:平成31年度「電力需要の低減に資する設備投資支援事業費補助金」に係る補助事業者(執行団体)の公募について|資源エネルギー庁

気づく方は気づくと思います。

あれ…エネ合補助金とそんなに変わらないな…と。

ちなみにこんな文言もあります。補助対象経費は“10%以上の電力需要低減のためであって、その普及を図ることが特に必要な設備・技術の導入に要する経費”と。この10%以上というのは工場・事業場単位でよく言う「工場全体の省エネ率」ではなく「電力需要の低減に資する設備投資支援事業費補助金」の目的でしょう。

エネルギー需要全体では2013年比▲13%の省エネを目指していますので、それに比べるとちょっと緩いかな?

でもエネ合補助金では申請の足切りが省エネ率1%ですから、それと比べると厳しいかな?(ただし採択平均は20%~22%と高いですが…)

色んな考え方が出来ると思います。

 

エネ合補助金は変わったのか?

「電力需要の低減に資する設備投資支援事業費補助金」が出てきて、エネ合補助金に変化はあるのでしょうか?

こちらも1月25日に執行団体の公募が開始されていますので、その時点の公表内容を見てみましょう。

エネ合補助金の単年度分としては約134.3億円、既に採択されている複数年度事業としては約247.7億円、合計約382.0億円の予算が検討されていたようです。予算案と成立予算で変動がなかったことから、ここも変動はないと思われます。

間接補助事業の概要について(予定)

【1.補助対象者】
全業種の法人及び個人事業主

 

【2.間接補助対象事業】
(1)工場・事業場単位:既設設備・システムの入替えや製造プロセスの改善等の改修やエネルギーマネジメントシステムの導入により、工場・事業場等における省エネ・電力ピーク対策を行う事業。 ※電力ピーク対策事業については、複数年度継続事業の後年度事業分のみを対象
(2)設備単位:既設設備を、補助対象設備ごとに定められた省エネルギー効果の高い設備への更新を行う事業。

 

【3.補助対象設備】
(1)工場・事業場単位:一定の要件を満たす全ての設備を対象とする。 ※具体的な要件については、経済産業省と協議の上決定する。
(2)設備単位:平成27年7月に策定された「長期エネルギー需給見通し」における省エネ量の根拠となった産業・業務用の設備のうち、業種横断的に使用される省エネルギー性能の高い機器又は設備を対象とする。想定する補助対象設備は以下のとおり。なお、補助対象設備については今後追加等があり得る。
<想定補助対象設備> ①高効率空調 ②産業ヒートポンプ ③業務用給湯器 ④高性能ボイラ ⑤高効率コージェネレーション ⑥低炭素工業炉 ⑦冷凍冷蔵庫 ⑧産業用モータ
※具体的な基準については、経済産業省と協議の上決定する。なお、トップランナー制度対象機器の場合、トップランナー基準以上の設備を補助対象とする。

 

【4.間接補助対象経費(消費税及び地方消費税額は対象外)】
(1)工場・事業場単位:【2.間接補助対象事業】に要する経費のうち、機器又は設備の設計費・設備費・工事費
(2)設備単位:【2.間接補助対象事業】に要する経費のうち、機器又は設備の設備費

 

【5.1事業当たりの補助率】
(1)工場・事業場単位:1/4以内、1/3以内、1/2以内とする。 ※なお、補助限度額(上限額及び下限額)については、経済産業省と協議の上、決定する。
(2)設備単位:1/3以内とする。 ※なお、補助限度額(上限額及び下限額)については、経済産業省と協議の上、決定する。

 

【6.募集方法】 一定期間の公募により実施する。

出典:平成31年度「省エネルギー投資促進に向けた支援補助金(エネルギー使用合理化等事業者支援事業)」に係る補助事業者(執行団体)の公募について|資源エネルギー庁

“省エネルギー”と“省電力”の違いだけで、あとは一緒では…?

そう考えられたと思います。「電力需要の低減に資する設備投資支援事業費補助金」がエネ合補助金をベースとしているのは明らかですね。

強いて言えば、今回エネ合補助金の工場・事業場単位では「電力ピーク対策」(これまでで言う区分Ⅱ、または区分イ)の新規事業がなくなった様子です。「電力需要の低減に資する設備投資支援事業費補助金」の方で力を入れるのか、ある程度電力平準化が進んできたと見ているのか、これまでの採択結果から効果が見込めなかったのかは現時点では明らかではありません。電力のみが対象でしたので、おそらく「電力需要の低減に資する設備投資支援事業費補助金」で対応するのだと思います。

また、設備単位で「高効率照明」がエネ合の方からは消えています。昨年、大企業では工場・事業場単位では照明設備のみの更新が対象外となり、その前には「投資回収年が5年未満の事業が対象です」と明記されるようになるなど効果の高いLEDや高効率照明には厳しくなっていましたが、ついに消えてしまいました。

しかし対象から外されるのは、それだけ「市場に浸透した」「補助金を使わなくとも十分な効果が見込める」と認識されたからでしょう。今回に限れば、照明は電気をエネルギー源として動くので、空調やボイラー、炉などと違いガスや重油から電気エネルギーへの転換、またはその逆がありません。通常電気→電気への更新なので、エネ合補助金ではなく「電力需要の低減に資する設備投資支援事業費補助金」での適用になったのではないでしょうか。

 

結局どっちを使えばいいの?

現時点ではエネ合補助金と「電力需要の低減に資する設備投資支援事業費補助金」の違いをどうとらえるべきか何とも言えませんが、あえて「電力需要の低減に資する設備投資支援事業費補助金」が創設されたということは当然何らかの意味があります。自然災害による大規模停電リスク、被害を軽減するためとあるので蓄電池や独立型電源の導入に加点がされるかもしれません。(だからエネ合補助金からピーク対策が削除されたのかも?)

そもそもガス空調を電気空調に変更する事業、照明をLED化するのみの事業をお考えであれば、前者はエネ合補助金、後者は「電力需要の低減に資する設備投資支援事業費補助金」しか使えない可能性があります。(工場・事業場単位、設備単位でも違いますので一概には言えません)

いずれにしろ似通った制度であることは確かなので、今のうちから事前準備や資料の収集を始めておき、どちらが公募開始されても申請できる準備をしておくことが肝要でしょう。

 

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